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おまけのページ、“EXTRA”の第2回目のテーマとして展開した紅茶の話は、2002年4月、晴れて独立することになりました。
 今後はCONTENTSかHP内に点在する紅茶専用ボタンをご利用のうえ、雑談におつきあいください。専用ボタンは紅茶関連の全リスト にリンクしています。

                                 
                             2004年05月14日

 紅茶に関係するエピソードのページです。

 本編の横におまけのようにくっついていた思い出話や、補足情報もこちらに移行し、単独でもご覧いただけるように一部改稿しました。本編と直接関連のあるものはその旨お知らせしていますので,合わせてご覧くださいね。

 そういえば...こんなことがあったよねという過ぎた体験談からリアルタイムのプチレポートなど、規則性のない雑談をお楽しみください。時に...お役に立つ話もあるかもしれません。
                                         04/05/15
 

     


アフタヌーンティー・レポート:スコーン8個のてんこ盛り
                  (チェスターフィールド メイフェア ロンドン)

 
イギリスに旅行するなら本場でアフタヌーンティー体験を!というのは、今さら...の話かもしれませんが、普遍的とも思えるお勧め情報ですよね。
 もうかれこれふた昔前にさかのぼる古い記憶では、ロンドン、サヴォイホテルのアフタヌーンティークーポンが5千円で旅行代理店でとりあつかわれていました。国内では今ほどポピュラーではなく、3段重ねのプレートが使われているアフタヌーンティーメニューを提供する店も、まだ珍しかった時代です。
 最初のロンドン旅行の時、我家は既にマリアージュ・フレールに出会っていましたから、イギリス紅茶に対する興味は薄れていましたが、アフタヌーンティー(と、クロテッドクリーム)へのこだわりは十二分で、定評あるホテルのラウンジやティーサロンの情報収集も怠りなく行いました。
 クーポン持参の日本人が集うところは面白くないし、予約が出来ないところで並んで待つのは味気ないし...で、ちゃんとした(博物館見学のついでに...とかではなくという意味です。)アフタヌーンティーは、まずは宿泊しているホテルのラウンジで楽しむのが一番という結果に落ち着きました。そもそも、自分たちが期待する雰囲気と、観光に適した装いがそぐわないわけで、午後のひととき、お茶の時間にあわせて着替えてとなると、ガイド本で紹介されているかどうかを選択の絶対条件にしてはいられません。気持ちにも時間にも余裕を持つという点では、そこに勝る場所は思いつかず、ロンドンに限らず、旅先でのティータイムは、我家は今日までほとんど宿泊ホテルのラウンジを利用しています。

 今回も、例外ではありませんでした。
 ホテルはメイフェア地区にあり、近くにはよく知られたサロンもありましたが、ティータイムの頃には既に薄暗くなる冬のロンドン、
わざわざ着替えに戻って、また出て行く気にはならないという本音に加え、多少古い資料ながら、とっておきのアフタヌーンティを楽しむという特集記事で紹介されていた11のホテルの内の3つが、同じグループのホテルだったというのも一応の安心材料にもなりました。
 
 バーラウンジを突っ切った先に設けられたコンザバトリールームの様な一角が、チェスターフールドメイフェアのアフタヌーンティー専用エリアでした。レストランからテラスルーム?のように見えた奥まった部分で、気候の良い時には本当に開放されるのか、開放される雰囲気につくられているのか....壁際にはガーデニングアイテムなどが置かれていました。気持ちのいい空間でしたが、豪華な設えではなく、テーブルも椅子もスッキリと統一されたものが配置されていました。
 コースは、シャンパンがつくか付かないかの二通りで、わたしたちが選んだのは、シャンパンなしの方です。


 
3段のプレートの1番下にサンドイッチ5種、(フィリングに合わせてパン生地も違ってました。)真ん中にケーキ、タルト、一番上にスコーンが4つ(二人分)と言う内容でした。
 食器もシンプルでしたし、盛りつけも,個々のボリュームが仇になってか、見栄えは、それなりでした。スコーンの大きさと価格(高級感)は反比例しがちという実感を根拠にすれば、繊細さ不足で高級感不足ということになるでしょうか。ロンドン市内のホテルというよりも少し郊外の邸宅で、※十年来の伝統を守っている調理人のスペシャリテでもてなされているた印象でした。

 ただ、予想よりもいっそうボリュームがあったものの、アフタヌーンティーの『量』は織り込み済みで、この日はわたしたちはお昼抜き。サンドイッチを平らげ、スコーンに手をのばしたわたしたちは、指先が捉えたソフトな感触にちょっと驚き、割って見て目を見張り、口に含んで言葉を失いました。スチームで仕上げたかのようなしっとりとした食感は、昨年の英国展で出会えたブラウンズホテルのスコーンを思い出しましたが、しっかりとした大きさがあるだけに、食感の妙は、いっそうのインパクトがありました。ふんわり?と思いきや、ナンにも負けないモッチリ感も有して噛み応えも充分!粉の甘みか、ミルクの香りか....噛む程に広がるほのかな風味もまた絶妙で、惜しげもなく提供されたクロテッドクリームがなくても(もちろんたっぷりと塗りましたが..)良いくらいではありませんか。スコーンのおいしさに絶句したのははじめてです。
 それにしても....コッツウォルズのとある村のカフェ、ブラウンズホテル、そしてチェスターフィールドメイフェア....英国でしっとり系のスコーンに出会う確率は案外高いんだろうか?などと記憶をたぐっていたところに、スタッフが「味はどうだい?」とばかりに愛想をふりましてきたので、わたしは、凄くおいしいと感激をあらたしてから、食感が日本で知られているものとはまるで違うことを伝えました。スタッフによれば、このソフトな食感が英国のスタンダードだとのことで、とすれば、スコーンのイメージはかなり根底から覆るかもしれませんね。で、どっちのスコーンが好みかと聞かれたので「もちろん、ここの!」と、リップサービスではなく本気の即答。すると、スタッフは、じゃ持ってきてあげると言ってきびすをかえすと、しばらく見えなくなりました。

 持ってくる...と言ったような気がしたけど、スコーンのお変わりのことかな?まさか、それはないよね、と曖昧なままに、2個目のスコーンを食べ終えようかという頃、「おまたせ!」と、空になったトッププレートが差し替えられたのです。何と、スコーン8個のてんこもり!まさかを越えた状況に圧倒されてると、サンドイッチは今作ってるからもう少し待ってというではありませんか。
 焦りました。確かに、サンドイッチもおいしかったと言いました。言いましたが、それが追加に直結するとは、思ってもいない話。なんとかサンドイッチの追加はキャンセルしたものの(オーダーしたわけじゃないんだけど...)わたしたちの前には、まだ手つかずのケーキと補充されたスコーンが8個!完食は考えるだけでも無謀.......それなら、優先順位は言うまでもなくスコーンですよね。補充されたものに手をつけないわけには....というよりも本当においしかったですからね。自然に食指が動きました。それでも、主人も私もそれぞれ2個が限界(トータル4個)でした。スコーン4個とケーキを残してギブアップモードを発信すると、欧米はありがたいですね〜。こちらが尋ねるまでもなく、残したものは全部パッキングしてくれました。(上イメージ真ん中)ホテルグループのシンボルでもある赤いカーネーションの生花つき。花の茎がスコーンやケーキにあたるじゃないの、衛生面は...?などと無粋なことは言いっこなし。スコーンの風味にスタッフのもてなしがパーフェクトとくれば、言うことはありません。我家のアフタヌーンティー歴で、これ以上の好印象で時間を閉じたところはなく、ものすごく、良い時間を過ごせたと確信しています。
 そして、客室で夜遅くに食したケーキが見た目以上においしかったのも嬉しい誤算でしたが、驚かされたのは、やっぱり、翌日お昼過ぎまで蓋つき容器内で保存していたスコーンでした。冷めてなお固くはならなかったスコーンを、クロテッドクリームもジャムもなく、それだけだ味わいに足ることを知り、わたしたちはまたひとしきり、感動したのでした。


                                       12/04/18